ものすごく正確な時計 その2


科学技術振興機構プレスリリース

共同発表:超高精度の「光格子時計」で標高差の測定に成功~火山活動の監視など、時計の常識を超える新たな応用に期待~


他の時計の精度

クオーツ以外の時計は何桁の時計なのか先に見てみよう。 検索してみると機械式の時計は日差が10秒程度らしい。 ということは4桁の時計である。 では他の時計、腹時計はどうか。 僕の場合、経験上時間を気にしなければ、一日四食になってしまう。 一日三食が正しいとすれば僕の腹時計は一日で24時間/3=8時間ずれることになる。 したがって、1桁の時計である。ひどい精度だ。

時間を測って空間を測る

超高精度の光格子時計を利用すると標高差が測れるということだった。 ようするに時間を測定することで空間を測定できるということだ。 時空間のつながりを感じる。 が、ここで簡単に驚いてはいけない。 というのも、時間を測って空間を測ること自体は馴染み深いものだからだ。

駅から徒歩3分のアパート、という表現を見たことがあると思う。 これは歩行時間を測ることによって距離を測定(表現)していることに他ならない。 山を登る場合、登山ルートも徒歩何分という表現をする。 案外身近なところで、時間と空間のつながりを利用しているのだ。 学問の名前を言うなら、これは運動学(kinematics)だろうか。

別の方法で、時間を測ることで標高を測定することを考えてみよう。 すぐ思いついたのは振り子である。 標高差があると重力の大きさが変わる。 ということは、標高が低いほうが振り子が早く触れるのではないか。 振り子の往復時間は、おもりの質量には依存しないけれど、実は重力加速度には依存する。 同じ振り子をでも山の上と下で振れる時間が異なるのだ。 実際の計算は読者の練習問題としよう。 学問の名前を言うなら、これは動力学(dynamics)である。

両方とも、運動速度という概念が時間と空間を結びつけている。 速度は日常にありふれている。時間を測って空間を測ることはありふれている。

重力が強いところでは、時間がゆっくり進む

プレスリリースの実験は、先に挙げたものとは全く異なる原理を利用している。 学問の名前を言うならば、一般相対性理論(general theory of relativity)だ。 これはすごい。

「重力が強いところでは、時間がゆっくり進む」という、アインシュタインの相対論の効果を測地技術に応用する

とプレスリリースにある。 標高が低い(重力が強い)ところでは、時間そのものが遅くなる。 振り子のように、おもりに重力という力が働き、その力が標高によって異なるせいで、振れる時間が変わる、という話ではない。 時間そのものが重力の影響を受けるのだ。

非常に残念なことに、僕は相対論の素養がないから、測定の原理について、これ以上のことは分からない。悲しい。 ただ、なんかわからんがすごそうな原理を使ってるんだ、ということが少しでも伝われば嬉しい。

次は、光格子時計のしくみについて書く予定。