コーヒーカップは閉鎖系か?


進化論を「再定義」する物理学者、ジェレミー・イングランドとの対話 http://wired.jp/2016/08/21/interview-jeremy-england/


記事の本筋ではないところではあるが、ツッコミをいれる。 まず閉鎖系の定義は、以下としている。

外界とエネルギーや物質の交換がある「開放系」か、それらが制限されている「閉鎖系(孤立系含む)」のどちらかによる。

「制限」とは、まったくやりとりしない、ということで良いのだろうか。

さて、コーヒーカップに砂糖を入れて(もちろんコーヒーも)、熱平衡に達することを考える。すなわち、

熱いコーヒーに角砂糖を入れたマグを1つの閉鎖系としてとらえた場合、砂糖の濃度が均一になり、コーヒーの温度が室温と同じになった時点で、エントロピーが最大値である「熱力学的平衡」を迎える。

コーヒーが冷める、ということは、環境(部屋の空気)とエネルギーをやり取りしてしまっている。 直前に定義した閉鎖系になっていない。

こういう問題は、断熱壁でおおわれた部屋(これは断熱系かつ閉鎖系)全体のエントロピー変化を考えなければならない。その場合は、コーヒーの温度は下がり、部屋の温度は上がる。そして、コーヒーを含めた部屋全体のエントロピーが最大となるように、コーヒーの温度・部屋の温度・砂糖の濃度(分布)が変化する、というのが正しい(と思うのだけど…)。コーヒーのエントロピーは大きくもなりうるし小さくもなりうる。 小さくなった場合は、コーヒー以外の部屋のエントロピーが上昇した分と相殺される。

記事の本筋については、

イングランドによると、エネルギーの散逸に最も効率がいいのは、他でもない自分の複製を作ることだからだ。

というのが気になった。 如何せんプリゴジン散逸構造をまったく知らないので、ピンと来ない。 が、変わったことを言ってそうでワクワクする。理解したい。