サルを訓練すると脳が大きくなりました!という研究

慶応義塾大学のプレスリリースから。理化学研究所との共同研究。
「達成感」による脳内変化を明らかに-新たな学習法や、精神・神経疾患の治療法の開発につながる成果-:[慶應義塾]

コモンマーモセットという動物は聞いたことがなかった。サルの一種で「マウスよりも人間に近い実験動物とし1て利用される」そうだ(Wikipediaより)。コモンマーモセットに道具を使って餌をとるよう訓練し、訓練が進むに連れて脳の側坐核(そくざかく)と呼ばれる領域の体積が増加することを明らかにした研究である。

この研究では、タイトルにある「達成感」が一つのキーワードだろう。コモンマーモセットは「達成感」を得るために難しい課題に挑戦し続けたという。果たして動物が「達成感」を得られていることを示すにはどうすればよいのだろうか。たとえ身近な人でも、その人が達成感を得られているかを見極めることは結構難しい(僕が鈍感なだけかもしれない)。それが言葉をしゃべらない動物ときたら、尚更大変そうだ。実際、プレスリリースにも「達成感は客観的に評価することが難しい感覚」であると書いてある。

プレスリリースでは、コモンマーモセットが達成感を得たとする根拠として、課題の報酬はおやつ程度の物であり、それを得るためにあえて難しい課題に挑戦するのは「やる気があるとき」だけとしている。さらに、訓練が難しくなっていくと、おやつをとるのに時間がかかるようになった。そうなってもコモンマーモセットは道具を使い続けた。このことから、「単におやつが欲しいだけではなく、成功したときの達成感が徐々に増大した」のだと考えられる、としている。

コモンマーモセットの実験において、課題の難易度は小さなステップを刻み、時間をかけて(試行回数は5000回・総訓練期間は13ヶ月)行ったそうだ。直接言及されているわけではないが、コモンマーモセットを訓練するのは相当大変だったのだろう。数字や文体から伝わってくる。

(サルでも)小さなステップを刻むことで側坐核の体積を増大させることができたので、今後の展開として(人間の)学校での学習や機能回復のためのリハビリのメニュー開発に応用も期待できるそうだ。

課題や目標を小さいステップに分けるというのは、目標を達成するための手法として自己啓発本で良く紹介されている。それに脳科学的な根拠を与えた研究、と言えるだろう(対象はサルだが)。